思想 2018年 12 月号 [雑誌]本ダウンロード
思想 2018年 12 月号 [雑誌]
10/29/2020 10:43:44, 本,
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オーストリアの偉大なる歴史家オットー・ブルンナーのナチズム加担を論証するハンス=ヘニング・コーテュームの『オットー・ブルンナーとナチズムー「時代を巧みにくぐり抜けて来ました」』(三佐川亮宏訳)が面白い。ブルンナーの主著は『ラントとヘルシャフト(領邦と支配)』であり、大きな業績として、ヴェルナー・コンツェ、ラインハルト・コゼレックらと共に全10巻に及ぶ『ドイツ歴史概念事典』の編纂に従事したことである。前者の『ラントとヘルシャフト』は、日本の西洋史学界、特に西洋中世史、近世史研究に絶大な影響を与え、故堀米傭三によって高く評価され、ドイツ領邦国家成立、諸身分(等族制)形成の研究を主導する著作となった。後者の『ドイツ歴史概念事典』の編纂は、ドイツ構造史・概念史・社会史研究の集大成として、歴史学者のみならす、哲学者や社会学者も参加する一大プロジェクトとなった。哲学者のマンフリート・リーデルの「市民社会の概念史」や、社会学者のニコラス・リーマン、ユルゲン・ハーバーマスの研究も収録されている。Amazonでは、この事典の古書が安価で入手できる。リーデルやハーバーマスの研究は邦訳があるが、この事典そのものの邦訳はない。この事典の意義は、近代の成立を近代的語彙の意味解釈(ゼマンティーク)から分析したことにある。例えば、「愛」の概念は、フランス革命によって、「友愛」の意味が付加され、近代的な語彙へと変容する(二クラス・ルーマン)。ところで、ブルンナーとナチズムの関連性は、容易に推測出来るものである。なぜなら、西洋法制史・国制史の研究は、近代国家の法制や国家体制を自明の前提とし、それが歴史的にいかにして形成されてきたのか(歴史的起原)を問うものであるからだ。 そしてドイツの歴史家は、ドイツ民族による統一と近代国家形成を歴史観の拠り所にする。上から(国家権力の形成)から歴史を捉える視点は、ドイツ民族優先の思想、国家主義的思想を生みやすい。ブルンナーの研究において、オーストリア=ハンガリー帝国におけるドイツ民族優先の思想によるハンガリー(マジャール)人抑圧・懐柔策が見られたことを著者は指摘しているが、驚くことではない。次回は、幻の著作『ドイツ民族の運命の道』を取り上げるという。ハイデガーを彷彿とさせる書名である。楽しみにしたい。
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