デミング博士の新経営システム論―産業・行政・教育のために

訳者は、おそらく、デミングの主張から本書のタイトルを「新経営システム論」という表現に持っていかれたのであろう。著者のいうシステムとは、「the system of profound knowledge」 。深遠とは、「内容が奥深くて容易にははかり知れないこと」（新村編『広辞苑』）。本書は、二十世紀の歴史の変動期とも重なるデミングの93年に及ぶ知識と理論とプロセスの叙述でもある。デミングは、説く。深遠なる知識のシステムは、変革のための理論である。まず、システムとは、その目的を達成しようとして協力して働き、相互に依存しあう複数の独立した構成要素の結合組織である。システムには、目的がなければならない。目的がなければシステムとはいえない（システムとは何か：p.60, 109.）。深遠なる知識とは何か。マネジメントのスタイルは必ず変革という過程を経なければならず、変革を遂行するには外部からの視点が必要である。これは組織を理解するための新しい理論の見取り図である（外部からの視点：pp.105-107.）。これでは分かりにくい。次の四つの部分から構成される。１）システムに対する理解、２）変動に関する知識、３）知識の理論、４）心理学。デミングの洞察に富んだ意見が広範に及び、まとめにくいが「システム論」に関しては次の言葉に凝縮されよう（p.82, 111）。組織のさまざまな構成要素が最適化されたとしてもその組織自体は最適化されない、もし、組織全体が最適化されればその構成要素は最適化されないだろう。システム全体のためには、ある構成要素で損失が生じることがあるからだ。目次、章だけ。索引、簡単だがあり。参考文献、章ごとの注にあり。ひも、あり。お子さん方のはしがき文あり。